立替払いのコストは「金額」ではなく「件数」で決まる

立替精算をやめられない理由として、よく聞くのが「うちは少額だから」です。これは判断の軸を間違えています。

立替精算にかかる作業は、1件あたりほぼ固定です。500円の精算でも5万円の精算でも、申請書を書き、レシートを添え、経理が確認し、振込データを作る——工程数は変わりません。

つまり負担を決めるのは金額ではなく件数です。

ケース月あたり件数1件あたり工数月間工数
高額・低頻度(例:備品購入)2件約10分約20分
少額・高頻度(例:給油代)30件約10分約5時間

金額でいえば前者のほうが大きい。しかし時間を奪っているのは明らかに後者です。「少額だから後回し」は、実際には最大の工数を後回しにしていることになります。

立替が生む3つの負担

1. 従業員側の資金負担

営業車を毎日使う従業員なら、月の給油代が数万円になることもあります。その金額を給料日まで自分の財布から出させている状態です。金額が大きくなるほど不満が生まれやすく、精算の遅れがそのまま信頼の問題になります。

2. 私費と事業費の混在

個人のカードで支払うと、明細に私的な支出と事業の支出が並びます。どちらがどちらかを毎月仕分ける必要があり、税務調査の際にも説明が煩雑になります。区別が曖昧なまま経費に入ってしまうリスクもあります。

3. 確認コストと不正の余地

レシートが本当にその用途のものか、確認するには相応の手間がかかります。厳密にやれば工数が増え、緩くすれば管理が効かない。この二択を毎月迫られること自体が負担です。

廃止の進め方:一斉にやらない

すべての立替を同時になくそうとすると、必ず失敗します。用途ごとに適した決済手段が違うためです。順番はこうです。

STEP 1:用途別に件数を数える

過去3か月の精算申請を用途で分類し、件数の多い順に並べます。金額順ではありません。多くの事業者では給油代が上位に来ます。

STEP 2:件数の多い用途に決済手段を割り当てる

用途適した手段理由
給油代給油専用のカード使途が限定され、車両別の記録が残る
消耗品・備品法人カード/購買サイトの請求書払い購入履歴がそのまま証憑になる
交通費交通系ICの利用履歴経路と金額が自動で残る
接待・会食法人カード件数が少なく、承認を挟みやすい
慶弔費など現金必須小口現金を少額だけ残す代替手段がない

STEP 3:残った小口現金を最小化する

上4つを置き換えると、現金が必要な場面は慶弔費など少数に絞られます。ここまで来れば、小口現金の残高照合はほぼ発生しなくなります。

給油代を最初に扱うべき理由

STEP 1で件数を数えると、多くの事業者で給油代が上位に来ます。理由は三拍子が揃っているからです。

しかも給油は用途を限定した決済手段が存在するという点で恵まれています。汎用の法人カードを従業員に渡すことに抵抗があっても、給油専用であれば使途がサービスステーションに限られるため、管理の不安は小さくなります。

設立1年目・開業直後の場合:汎用の法人クレジットカードは決算書をもとに与信を判断するため、1期目は選択肢が限られます。給油用途に絞れば、クレジット会社の審査ではなく組合独自の審査で判断される手段があります。詳しくは1期目の支払い手段を整理した記事をご覧ください。

置き換えた後に何が残るか

立替をなくしても、経理の仕事がゼロになるわけではありません。残るのは次の作業です。

消えるのは、現金の受け渡し・レシートの回収・転記・精算振込という4工程です。ここが月5時間を占めていたのであれば、その大半が戻ってきます。

保存書類の扱いについてはインボイス制度とガソリン代の記事で詳しく整理しています。

まとめ

車両コスト全体の見直し順序は社用車1台にかかる年間コストの記事にまとめています。